大判例

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大阪地方裁判所 昭和43年(ワ)4631号 判決 1970年6月18日

原告

西別府サチ

原告

児島巌

原告

児島利枝

原告

児島幹博

右法定代理人親権者父

児島巌

同母

児島利枝

原告

去川紀子

右原告ら五名代理人

石橋一晁

東垣内清

鈴木康隆

原告補助参加人

医療法人手島会

右代表者理事

手島祥一

右補助参加人代理人

佐藤武夫

河合宏

被告

柏原達也

被告

福島始

被告

福島市太郎

右被告ら三名代理人

尾埜善司

前田嘉道

右尾埜善司復代理人

平松耕吉

主文

一、被告らは各自、原告西別府サチに対し金一六万円、同児島巌に対し金一五万六〇〇〇円、同児島利枝に対し金一二万六三〇〇円、同児島幹博に対し金二万円、同去川紀子に対し金一四万五五〇〇円、ならびに右各金員に対する昭和四三年八月二九日から支払ずみに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

二、原告らのその余の請求を棄却する。

三、訴訟費用は原告らと被告らの間に生じたものはこれを三分し、その二を原告らの、その余を被告らの各負担とし、参加により生じたものは、補助参加人の負担とする。

四、この判決の第一項は仮りに執行することができる。

事実

第一  当事者の申立て

(原告ら)

被告らは各自、原告西別府サチに対して四二万三七〇〇円、原告児島巌に対して三九万七〇五〇円、原告児島利枝に対して三二万三〇五〇円、原告児島幹博に対して二三万三一五〇円、原告去川紀子に対して三三万六二五〇円、並びに右各金員に対する昭和四三年八月二九日から支払いずみに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

との判決、並びに仮執行の宣言を求める。

(被告ら)

原告らの請求を棄却する

との判決を求める。

第二  原告の請求原因

一、傷害交通事故の発生

昭和四三年四月二五日午前〇時五分頃、大阪市西成区千本通二丁目二八番地先交差点において、原告ら五名の乗車していたライトバンが、信号待ちのため停車していたところ被告柏原達也の運転する大型貨物自動車(泉一は一五九〇号)がこれに追突した。

二、原告らの負傷

1  右追突の衝撃により、原告らは次のとおりの傷害を蒙つた。

原告 西別府サチ 頸椎捻挫・ムチウチ症、左下腿挫傷、左足関節部捻挫。

原告 児島巌 頸椎捻挫・ムチウチ症、後頭部挫傷、脳内出血の疑い。

原告 児島利枝 頸椎捻挫・ムチウチ症。

原告 児島幹博 頸椎捻挫、後頭部挫傷、脳振盪症。

原告 去川紀子 頸椎捻挫・ムチウチ症。

2  事故発生後、原告らは救急車により、補助参加人の経営する大阪市浪速区立葉町手島外科内科(立葉診療所)に搬送されたが、満床で、原告西別府、同去川の両名のみ症状重篤のため(四〇度の発熱を伴う)一時治療室に収容されたのち、ようやく空いた病室へ移り、そのまま入院した(原告去川はその後一週間発熱が続いた。)

しかして、原告児島巌、同児島利枝、同児島幹博の三名はいずれも重症ではあつたが、右二名よりはやや軽かつたので、やむなく通院することにしたが、その後も入院を要する状態で、あちこちの入院可能な病院を捜し歩き、同年五月一日には被告らに堺市民病院を紹介されたが、医師が入院の必要なしと誤診したため、入院できず、余りの病苦に堪え得なくて前記参加人経営の手島外科内科に頼みこみ、同年五月二日漸くここに入院した。なお、同年五月三日から原告児島巌も三七ないし三八度の熱を出し、氷で冷し続ける状態となり、その後原告ら五名は右参加人診療所で入通院治療を続け、(入院期間、原告西別府五〇日、同去川五二日、同児島巌、同児島利枝各四五日、同児島幹博三〇日)昭和四三年六月一六日からは訴外耳原病院で治療をうけた。

三、損害の発生

前項のごとく、原告ら五名は参加人診療所において、昭和四三年六月一五日まで治療を受け、同診療所に対しそれぞれ本件請求額どおりの治療費支払義務を負担した。(その余の損害慰藉料、逸失利益、入院雑費等―はすでに被告らから支払いを受けた。)

四、責任原因事実

1  被告柏原達也は、前方不注意、脇見運転、最高速度制限違反、徐行義務懈怠等の過失により本件事故を惹起したものであるから、第一次的に自賠法三条により、第二次的に民法七〇九条より、原告らの前項損害を賠償する義務を負う。

2  被告福島始は、本件加害大型貨物車を保有し、運転手の柏原を雇傭していたものであるから、第一次的に自賠法三条により、第二次的に民法七一五条により、原告らの前項損害を賠償する義務を負う。

3  被告福島市太郎は、被告福島始に共に鑵詰製造等の営業を行い、そのために被告柏原を雇傭して同被告に本件加害車を運転させていた者であるから、第一次的に自賠法三条により、第二次的に民法七一五条により、原告らの損害を賠償する義務を負う。

五、本訴における請求

以上により、原告らは被告らに対し、それぞれ第三項の治療費相当額並びにこれに対する本訴状送達の日の翌日である昭和四三年八月二九日から支払いずみに至るまで、民事法定利率年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める。

第三  被告らの主張

一、認否

1  請求原因一項(傷害交通事故の発生)の事実は認める。

2  同二項(傷害の内容)の事実は争う。

3  同三項(損害の発生)の事実中、原告らが参加人の診療所で治療を受けたことは認めるが、その余の事実は争う。

すなわち、次項以下に詳述するように、原告らは参加人診療所に対して、その主張する額の治療費全額の支払い債務を負担するものではなく、仮にそうでないとしても、被告らがその全額の賠償義務を負うものではない。

4  同四項(責任原因)の123の事実は認める。

二、参加人方診療所の治療費について

原告ら五名は、本件事故後参加人経営の手島外科・内科(立葉町)において、各四九ないし五〇日間の入通院治療を受けているが、その治療費総額は一七一万三二〇〇円にも達している。これは一人一日平均六七〇〇円余に及ぶおよそ常識を越えた額である。

しかも、右治療費を同診療所の治療内容と比べるとき、あるいは健康保険診療報酬基準ないし大阪府下各病院の自費患者に対する治療費基準により算定した治療費額と対比するとき、その過大さは、極めて顕著であり、その詳細は左のとおりである。

1  治療内容についての検討

(一) 手島外科において、原告らは何ら右治療費に値する程度の特別な医療技術を要する複雑困難な処置又は検査等を受けたわけではなく、レントゲン、脳波、超音波等による通常の諸検査や頭頸部安定の為の措置、機械けん引、湿布等の簡単な処置の継続、もしくは諸種の解熱鎮痛剤・ビタミンB1剤等の機械的な大量投与を受けたに止まる。

(二) のみならず、同診療所における治療一般並びに本件における治療については、次のように多くの問題点がある。

(1) 同診療所のカルテには、患者の症状内容、その変化並びにこれに対する適切な治療の存否等を認定するに足る充分な記録がなされていない。そして、本件においては、前記のごとき初期の諸検査の結果と、それがその後の治療内容とどの程度有機的に結びつけられたかを客観的に認識検証することが不可能となつている。

(2) 患者にことさら不安感を与えるような不適切な症状説明がなされ、これが(心因的な契機により)患者の症状を固定長期化せしめる結果となつた疑がある。

(3) 徹底した診療検査を行なわず入院を認めることによつて、患者の症状内容の確定を怠り、これに対する適切な治療方針設定の必要性をあいまいなものにしている傾向がある。

(4) 障害が長期化したり、ことに入・退院の可否、要否等の判断に際しては、当然精密検査を施行するか、ないしい専門医の診察をうけさせるべきであるのに、このような配慮が全然払われていない。

(5) 通常、入院患者に対しては日常的に継続されるべき、体温記録、脈搏記録並びに医師による入念な症状観察等も原告らに対しては行なわれていない。

(6) 原告らは頸部の安静固定こそが重要である新鮮期治療の段階において、頸椎のけん引を受けている。これは近時の学説ではかえつて症状の軽快を妨げる恐れのある不適切な治療行為として禁忌とされている。

(三) 右のような診療方針、経過観察の杜撰さによつてのみならず、同診療所の人的・物的施設のアンバランスによつても充分うかがわれる。手島外科内科の立葉町診療所は救急病院であり、病室数二〇余、ベット数七〇余、入院患者現時七〇余名を収容し、その大部分は交通事故による鞭打ち症患者として収容せられているのに対し、充実した検査設備もなく、看護婦は九名、医師は院長も含めてわずかに二名が、広大な福島区内の他の診療所とかけ持ちし、しかも外来患者も含めた全診療を受持つているという驚くべき状況にある。大阪府下の各病院の現状を調査した結果(末尾別表第五)に照しても、その不均衡ぶりは明らかであろう。

(四) さらに、同診療所は、原告らにむやみに多種多量の薬剤を投与し(ことにその大部分は、単価の高い注射、就中静脈注射の形で与えられている)、不必要に高値な治療を選択している。

2  健康保険における診療費基準との対比

(一) 前項のごとき治療内容の当否はともかくとしても、これを当時の健保基準乙表(健康保険法第四三条の九第二項、およびこれに基く厚生省告示第一七七号)に基いて換算すればその診療報酬額は別紙第一表、第二表のとおりとなる。

手島外科が現実に請求している治療費を、対照可能な範囲において右基準と比較すれば、投薬・注射費(五九万五〇〇〇円)については健保基準の5.12倍、その他の診療費(五七万七三〇〇円)について5.46倍、総計では5.27倍にもなつている。

(二) 補助参加人は、本件治療費は健保基準のせいぜい二倍強にすぎない旨を強弁するが、それは直接治療行為に関係ない入院室料、食費、ふとん、光熱、テレビ費等を含めて計算したものである。又投薬・注射に関しても、現実の投与量を無視して、最大使用量を基準として算定しており、健保等の基準額が不当に高くなつている。これらの点を別にして、仮りに参加人の換算方法に従つたとしても、前記入院室料、ふとん代等を除いて比較すると、参加人方の治療費は、投薬・注射費(六四万四一〇〇円)について健保基準の4.3倍、労災保健による基準額の4.3倍に、その他の治療費(六六万三三〇〇円)については、同じく4.3倍及び2.8倍に合計(一二〇万七四〇〇円)については同じく4.3倍及び3.4倍になつている。

(三) 手島外科は、前項においても述べたとおり、ベッド数以外の人的、物的施設および経費を最少限度におさえ、他方、多種多量の薬剤投与による単価の高い治療行為を選択しているものであり、加えて、健保乙表は薬価中心の報酬体系であるところ、最近では薬の市場価額も右薬価基準に照らして大巾に低下していることでもあるから、これにより算定した診療報酬に従つても十二分な利益を得ることができたはずである。しかるに、同診療所は、右基準の五倍余に及ぶ不当に高額な治療費を請求しているのであり、その社会的意味での異例さは顕著である。

3  他の病院の自費患者に対する治療費水準との対比

大阪府下の各病院ならびに診療所を任意に抽出して調査した結果によれば、ほとんどの病院等において、自費患者の治療費も健保基準による治療費の1.5倍の範囲に止つている。この点からしても、手島外科の診療費基準は極めて異例のものである。

三、被告らの治療費賠償義務についての検討

前項迄で検討した如く、参加人方の治療費は、社会通念に照らし、甚だしく過大である。ただ、原告らは治療費自己負担の患者であつて、その治療内容及び治療費の算定について、健保基準による制約を受けるものではない。しかし、そうであるからと言つて、医師は自費患者に対しては如何なる治療内容を選択し、如何なる額の報酬を請求するのも自由であるとは言えない。原告らは社会通念に照らし、自己の症状に対する適切な治療行為と、これに対する相当な治療費の支払いを予定して、同診療所に対して治療を依頼していたものであるから、これを超えた不適切な治療もしくい不相当な治療費支払いの合意は、その受診当初から存しなかつたものである。それ故、同診療所の原告らに対する前述のごとき不適切な治療に基く、かつ社会一般の水準に比べ異例に過大な治療費の請求権は、当事者の約旨に反するものとして、当初から存在しなかつたものである。

また、仮にそうでないとすると、原告らは治療費が過大になることをも予測して、手島外科に治療を依頼したことになるから、右治療費の過大部分は、本件事故と相当因果関係に立つ損害とは言い得ない。そして、仮りに手島外科において行なわれた治療の内容がすべて適切かつ充分なものであつたと仮定しても、これを健保基準により換算した治療費額の1.5倍(前記二項の3合計五一万三九六〇円)を越える部分については賠償の責任を負わないものと考える。

第四  原告補助参加人の主張

一  同補助参加人の診療所における治療内容について

1  被告は、原告らが手島外科で簡単な検査と薬物等の機械的な大量投与を受けたに留ると主張する。

しかしながら、レントゲン写真による病状の診断一つを例にとつても、高度の専門知識の集積と、永年の臨床経験を必要とするものであつて、ましてや年令・性別、傷害の部位程度、治療方針の希望等あらゆる条件を異にする個々の患者に対し、最も適切な治療内容と投薬の種類等を決定するのは、これら高度の専門知識と臨床経験を基礎に、複雑な思考過程を経て初めてなし得るのであつて、そのようにして選択決定された種々の薬品の投与、不投与の方針について、「機械的な大量投与」という評価を与えること自体、医療行為に対する認識不足も甚だしいと評さざるを得ない。

2  被告は、手島外科のカルテの記載が簡単にすぎると主張する。

なるほど、医師は遅滞なく診療事項をカルテに記載すべきものとされ、かつ、その記載は詳細かつ具体的である方が好ましいことに疑いはない。しかしながら、主として人手不足から、仲々理想どおりに行かないのが現実である。しかもカルテの記載が義務づけられているのは、本件のごとく治療の内容について紛争が生じたときに、客観的にそれをテストしようとすることに目的があるのではなく、医師がその診療について過誤なきを期することが主目的であるから、参加人のごとき医師の人数の少い診療所においては、カルテの記載は(治療および投薬内容の外は)患者の病状について備忘上の必要を充す程度の内容であれば足りると解すべきである。しかして、患者を診療した医師は、自己の投薬治療の内容によつて、逆に病状に関する記憶を容易に喚起しうる筈であるから、参加人のカルテの記載が簡略すぎたとしても、決してその治療内容が社撰であつたということにはならない。

3  被告は原告らが入院中に体温検査や脈搏検査等を受けていないことを強調する。しかしながら、鞭打ち症患者の場合には、通常、体温・脈搏に異常を来たさないのが普通であるので、その正確な検査記録は毎日行なわないが、その代り医師が入念に病状を観察し、必要に応じて体温・脈搏等の精密検査を行つているのである。

4  被告は手島外科の治療方針等に問題があると主張する。

しかしながら、参加人方で行なわれた治療方針は、専門雑誌「臨床外科」第二二巻三号所載の検査方法、処置・投薬方針に適合しているばかりでなく、京都大学神経外科講師富永博士を招へいして診療方針全般に関する指導を受けつつ、患者の治療にもあたつて貰つているのである。不必要に多種多量の薬剤を投与しているということは決してない。また参加人が初期治療において行つた「けん引」は一見現在の通説的治療方法に反するように見えるが、決して強度のけん引を行つたものではなく、患者に安静を保たせる目的でけん引の形をかりたものにすぎない。したがつて、治療方法としてけん引を行う場合には、一般に約四五度の傾斜を与えるけん引を行うのが普通であるが、参加人は約一〇度の傾斜を与えているにすぎない。治療初期においてこのような方法で安静を保たせることが、治療上非常に有効であることは、多くの実例が示している。

5  被告は手島外科立葉診療所の人的物的施設の不均衡をいう。

しかし、本件診療当時は福島区内の病院は完成しておらず、二つをかけ持ちするということもなく、立葉診療所には、常勤医師当初一名(六月一日以降二名)、看護婦九名、事務職員九名を擁し、かつ非常勤医師約五名程の応援を求めていた。(週二回は前述富永医師に来診を求め、手術時には随時専門医の応援を求める他、常時当直医一名に来てもらつていた)。また、諸検査設備等も、同種規模の診療所に比べ相当高度な水準にあつた。

6  本件において、原告らのレントゲンフイルムを鑑定した鑑定人の意見中には、頸椎の辷りあるいは亜脱臼を指摘した参加人の診断と異なる意見が見られる。しかしながら、頸椎レントゲン像の読影についての「正常範囲」の確定は対象患者ごとに相異し、かつ診断者の主観が作用し易いものである。しかして、受傷時に頸椎椎体相互に強い位置的変位があつても、完全脱臼でないかぎりその直後には一応正常な位置関係にもどるものと考えられるので、たとえ正常範囲内と考えられる程度の所見でも、臨床症状とあわせて、少しでも異常性があると判断された時には、初期治療としては、一応辷りないし亜脱臼としておくべきものと考えられる。さらに陳旧例を扱うことの多い大学病院と異り、初期治療を担当する救急病院では、レントゲンは一つの補助診断に過ぎず、他の臨床症状を主体として診断しており、かつ、初期治療時には、少しでも疑いのある異常徴候(レントゲンと臨床所見からの総合判断)は徹底的に治療対象としておかないと、悔を千載に残すことになり易いのである。かかる観点から参加人は辷りないし亜脱臼との診断を下したものである。

7  なお付言するに、原告らはいずれも参加人の診療態度に感謝している。これは参加人がすべての患者に誠心誠意治療を行い、その後の世話を見ていることの表われであり、かかる信頼関係があつてこそ治療効果も倍加するのであり、参加人が営利本位の経営をなしているなどとの主張は全く皮相的観察にすぎない。

二、健保基準による治療費との対照について

1  被告は、参加人方の治療費を健保基準に比較して高額にすぎると主張する。

しかしながら、健保基準そのものが、医師の技術を極度に過少評価して成り立つているもので、これと比較して治療費の適否・高低を論ずること自体、賛成し難い。

さらに、後述するように、交通事故の救急治療においては、一般外傷の保険診療の如く、一定基準によつて画一的、均一的に治療を施すことがそもそも不可能であり、このような場合には、健保基準に一定倍率を掛けて適正な救急治療費を算出するが如き議論の不合理性は、より一層甚だしいのである。

2  仮りに健保乙表に従つて原告らの治療費を換算するとしても、健保基準に於ても差額ベットが認められていることを考えに入れれば、その治療費はそれぞれ別表第三表第一欄のとおりとなるはずである。なぜならば、原告らの場合には、その希望もさることながら、その傷害の程度からみて、いわゆる大部屋には収容し難い事情にあつたのであるから、仮りに健保基準による治療を行う場合でも、差額ベット料の徴収をなし得た筈だからである。

なお、同じ換算を労災保険の治療費基準に従つて行うとそれぞれ同表第二欄のとおりとなる。

結局、例えば原告西別府の例で言えば参加人方の治療費は健保基準の2.62倍、労災基準の2.2倍になつているにすぎない。熟達した医師と、充実した検査設備を有する参加人経営の診療費としては、決して過大とは言えない。

3  また、日本医師会が、昭和四四年一〇月一四日の常任理事会において作成した「自賠法関係診療に関する意見」中の「自賠法関係診療料金指標」に準拠して(これに記載のないものは、全体の傾向から類推して)、前項の換算を行なえばそれぞれ前同表第三欄のとおりとなる。参加人の請求した治療費が決して不当に高額なものでなかつたことは、これによつても一層明らかである。

三  救急病院における治療費の特殊性について

参加人診療所の診療費体係の適否を論ずる際に、見落してはならないのは、救急病院の特殊性である。

1  救急病院の指定を受けるためには、医師の技術、病院の設備等について厳重な検査を受ける外、夜間も医師の当直が義務ずけられ、予測困難な重症患者の搬入に備えて、即刻集中的かつ適切な救急治療を施し得るよう、常時、待機姿勢を保持する必要があり、また救急用ベットを常に明けておかねばならないことなど、病院経営上、経費の増大を来たすような数多くの制約を受けているのである。

2  また、患者についても、他の一般病院と異なり、いわゆる「いちげん」の患者が多く、治療費の取立てに多大の困難を伴うのであつて、健保、労災の場合のように簡単な手続で確実に支払いを受けうるのと非常に違つている。

3  また、交通事故患者の場合は、被・加害者とも遠隔地の者という事例も多く、かつ事故責任につき両者に紛争が生じ、結局どちらからも治療費の支払いを受け得ないという事例も、決して少くはない。参加人においても、治療費の未収は相当額に達し、病院経営上危機に頻しているのが実情である。

4  「大阪救急」誌第九号によれば、大阪赤十字病院の安藤協三博士は、実際の救急患者の例(深夜頭蓋血腫患者に開頭手術を施す例)を設定し、同病院の給与水準等を考慮して具体的な必要経費を算定し、救急医療の適正料金に対する考察を行つた結果、救急医療費としては現行の健保点数を基準とした医療費の少くとも二倍の料金を設定すべきであろうと述べている。

ところで国公立病院と、私立の病院とでは人件費に格差があり、特に医師の給与においてはそれが著るしい。例えば、参加人診療所の副院長たる藤尾和久の給与は月額三四万五〇〇〇円、医師岩坪功氏は三二万六〇〇〇円であり、右設例の日赤の場合の三倍以上にのぼつている。さらに前述富永博士の給与は一時間あたり五、〇〇〇円であり、医師の当直料は平日七〇〇〇円、日曜日一万四〇〇〇円である。

従つて、右筆者の設例に、参加人診療所の給与水準を代入し、その総人件費を求めると、右設例(甲表)を健保基準乙表に換算し直した場合の治療費の実に2.6倍になるのである。

四  結論

右のとおり、いずれにしても参加人の請求した治療費は相当な範囲に止るものであつて、原告らは参加人に対してその支払義務を負担しているので、原告らの被告らに対する本件請求は、全額、認容さるべきである。

以上、原告を補助して主張する。

第五  証拠<省略>

理由

第一争いのない事実

原告ら主張のとおり、追突事故が発生し、原告らが原告補助参加人経営にかかる浪速区立葉町の手島外科内科(以下参加人診療所という)から各診療費の請求を受けていること、ならびに被告らが本件事故によつて生じた原告らの損害を賠償すべき関係にあることは、いずれも当事者間に争いがない。

第二本件における争点

一被告らは第一に、原告らと参加人診療所との間のいわる診療契約は、患者が診療所に対し、必要適切な診療行為を依頼し、これに相当な対価を支払うことを約束するものであるところ、本件診療費は、右相当な額の範囲を越えているとして、原告らのこれに対する支払義務の負担を否認し、第二に、右診療費債務が本件事故と相当因果関係の範囲内にある点を否認する。

しかして、右第一の争点は、契約解釈の問題であるとともに、結局は、参加人治療費における原告らの全体としての診療費が、診療の対象となつた原告らの傷害の程度並びに社会一般の診療費の水準に比較して、著るしく高額にすぎるか否かという判断につながるものであり、第二の争点もまた、その診療費単価そのものの社会的な相当性の判断並びに右診療費が、本件事故により原告らの受けた傷害の治療に向けられ、そのために必要であり、かつ相当であつたか否かの判断に帰着するものである。ところで、最後の点は、一般的には、医師の診療行為は専門的な知識と良心に従い、患者のその時々の症状に応じて適切になされたものであると推定されるところから、損害賠償請求訴訟においても、当該治療費の支出又は該債務の負担と、交通事故との間に、全体として、相当因果関係を有するものと認めることができるのであるが、本件においては、まさにこの点が主要な争点であり、かつ後述のような参加人診療所における診療の実態、就中、病院開設の許可をえてなすべき診療行為を、医療法に違反して、常勤の医師一人で八〇床ものベッドを設置し、極めて不完全な人的施設のもとに多数の入院患者を収容して診療行為をしていたこと等に照らすと、治療の対象となつた原告らの負傷の程度とこれに対する個々の診療行為の必要性ないし相当性を個別的に検討して初めて当該診療費債務と事故との相当因果関係を明らかにし得るものと考えられる。

そこで、これらの点について項を改めて、次の順序で検討を加えてゆき最後にまとめて法律的判断をなすことにする。

1、本件追突事故による原告らの受傷の有無並びにその程度(第三項)

2、参加人治療所において行なわれた診療行為の内容と回数(第四項)

3、右診療行為の必要性ないし相当性(第五項)

4、診療費単価そのものの社会的な水準との比較検討(第六項)

なお、ここで注意すべきは、本件においては右1、ないし3、の点、就中1、及び3、の点について、直接的な証拠を必ずしも十分に期待し難いことであり、このことは本件事案の特異性を徴憑するものである。すなわち、本件においては後に判示するように参加人診療所の原告らに対する診察の結果並びにカルテ(熱計用箋を代用)の記載が、極めて不十分かつ粗雑であり、治療中における原告らに対する詳細で且つ客観的な一般臨床検査の結果並びに愁訴の推移、臨床所見の経過等科学的診断について最も基礎的な事項(レントゲン所見、脳波、超音波検査の結果等は、この種傷害についてはあくまで一つの補助診断法にすぎない)がほとんど明らかにされていない。原告西別府サチ、同児島巌の各本人尋問の結果にしても、その内容は、一般に心因的加重の影響を免れ得ない単なる自覚的な愁訴に止り、それのみでは到底客観的、医学的診断の根拠となりうるものではなく、かつ治療当時より日時も経過し、正確な順を追つた記憶も期待し難いものである。さらに、参加人代表者証人医師手島祥一にしても、これらについて客観的な記憶を期待し難い。(さらに、同証人の証言並びに弁論の全趣旨によれば、同証人は、証人尋問期日に先だち、原告らのカルテ原本の随所に、当時の症状に関して、到底自らの記憶ないしはカルテの既存の内容からの合理的な推察に基くものとは考え難い詳細な追加記入を行い、証人尋問にそなえていたことさえ認められる。)。従つて、結局本件においては、原告らの当初の受傷の程度並びに症状について、鑑定等による客観的で、かつ、詳細な認定は困難であり、これに応じて、参加人診療所で行なわれた個々の診療行為の必要性ないしは相当性を、十分な資料を基に具体的個別的に検討することもまた非常に困難であると言わなければならない。

さればとて、右の如き事情から、直ちに原告らの受傷程度ならびに参加人診療所における各診療行為の必要性ないし相当性、更には当該医療費の事故との相当因果関係性について一律に存否不明なものとなすべきものではなく、もとより、これを被告側に(すなわち右診療行為の必要性を争う側の)不利益に帰せしめることも相当ではない。それ故本件においては現存するかぎりの資料を基に、参加人診療所の診療に関して提出された間接的諸資料から本件の診療行為の全体的な傾向を把握し、その上に立つて本件争点に対する結論を導き出さざるを得ないものである。

二なお、以下の認定は先だち、認定に供した書証の成立等について、一括して判断しておくことにする。<中略>

第三原告らの受傷の有無並びにその程度について

一参加人診療所におけるカルテである乙一号証(原告西別府の分)、乙三号証(原告巌の分)、乙四号証(原告利枝の分)、乙五号証(原告去川の分)の「外傷初回処理及び所見」とある欄の記載、訴外耳原総合病院の診断書である甲一三号証の一、二(原告西別府の分)、甲一四号証の一、二(原告巌の分)、甲一五号証(原告利枝の分)、訴外城南病院の診断書である甲一六号証(原告去川の分)、大阪大学医学部附属病院に対する鑑定嘱託の結果(乙二八号証)により認められる原告西別府、同利枝、同去川の頸部レントゲン像上の後述のごとき所見、原告西別府、同巌各本人尋問の結果並びに当事者間に争いのない本件事故の態様を総合すると、原告西別府、同巌、同利枝、同去川が、本件追突時の衝激による頸部の急激な過伸展、過屈曲の運動に伴い、何らかの程度において、その頸部にいわゆる捻挫の損傷を受けたこと、原告巌が後頭部に軽い挫傷を受けたこと、原告西別府が左下腿部に打撲傷を受けたことがそれぞれ認められて、これに反する証拠はない。

二しかして、原告幹博については、乙二号証(同原告に関するカルテ)の病名欄、甲二号証の二(参加人診療所医師手島祥一作成の診断書)の傷病名欄には「頸椎捻挫」と記載されているところ、右甲二号証の二自体に「頸部には明らかな所見がない」旨明記されており、さらに右乙二号証の昭和四三年五月二九日の欄には「後屈時に第四頸椎に後方亜脱臼がある」旨記載されているけれども右乙二号証自体の外傷初回処理及び所見の欄によれば機能検査の結果は正常で何らの異常所見も記載されておらず、かつ当該レントゲンフイルムについての前記鑑定嘱託の結果によつても頸部レントゲン所見に何らの異常も存しなかつたことが認められる。その他、同原告については、右乙二号証にある圧痛の存在についての簡単な図示の他には何な異常所見の存在を疑わしめるに足る資料は存在せず、かえつて、弁論の全趣旨(原告の主張)によれば、同原告は参加人診療所に入院する前日、訴外堺市民病院においてその両親たる原告巌、同利枝と共に、入院加療の必要性はない旨診断されたこと、及び参加人診療所に入院した翌々日からはクレヨン、マンガ本、模型自動車、プラモデル等多数を買与えられたことが認められる点に照らし同原告が入院中常時ベッドで安静固定されてけん引を受けていた旨の乙二号証の記載ならびに証人手島祥一の証言は、にわかに措信し難いところである。なお、一般に小児の場合(乙二号証によれば同原告は当時五才)頸椎椎体間の可動領域が広く、線維輪も比較的強靱で、頸全体が弾力性に富め、また追突時の頸椎の過伸屈がシートの背により保護されていること、さらにはその症状に心因的な加重が加わりにくいことなどにより、頭部の重量比を考慮に入れても、通常、いわゆるむちうち症にはなりにくいものであると言われている。

また、同原告が参加人診療所において右ベッドけん引のほか頸椎捻挫に対する治療を受けたこと自体は、後に詳述するような参加人診療所における治療一般についての疑問に照らし、右の点についての十分な証拠とはなし難い。

以上を要するに、原告幹博については、頸部に器質的損傷を受けたことを証するに足る措信すべき証拠が存在しない。しかしながら乙二号証によれば、同原告について当初後頭部の打撲が認められ、そのために当初四回程のシップ及び投薬等の措置を受けたこと並びに初診時に用心のために超音波検査と頸部のレントゲン検査を受けたことが認められるが、前記事故態様からして、これらの措置等の必要性は一応肯定される。

第四参加人診療所における診療の内容・回数について

<証拠>を総合すると、参加人診療所が原告ら五名に対して行つた診療行為(入院及び給食の処置を含む)の内容及び回数はそれぞれ別表第四表の一ないし五のとおりであることが認められる(ただし、乙一ないし五号証の一部には記載があるが、その別表並びに甲三号証の一ないし五に記載されず、参加人が請求を脱漏したものと認められる一、二の項目を除外した。しかし、原告利枝についての「採型」、原告去川についての「診断書発行」は参加人の主張の基礎である丙三ないし七号証にとりあげられているのでこれを補充した。)。

なお、投薬・注射の分量については、主に前掲カルテの記載、診療費一覧表、前掲各証言によりこれを認定し、右に反するレスプラS及びアリナミンについての証人手島の証言、アリナミンについての証人藤尾の証言ならびに丙三ないし七号証の一部は措信しない。他に右認定を左右するに足る証拠はない。

第五本件診療の内容についての検討

一原告らについてのカルテである前記乙一ないし五号証には、原告らの症状並びに医学的諸診断の結果に関し、本件事故当夜外部から来ていた参加人診療所の当直医師が記載したと認められる外傷初回処理及び所見の簡単な記載及び証人手島の記入したと認められるレントゲン所見以外には、その経過等についてほとんど何らの記載も認められない。医療法上医師は診療に関する事項を診療録に記載し、これを五年間保存することが義務ずけられているものであり、かつ、後に詳述するような諸事情、例えば参加人診療所の入院患者の過剰さ、入院管理のずさんさ、診療態度等を考え合わせると、右は単にカルテにその旨の記載が残されていないだけでなく、原告らについては、その症状・愁訴の推移に関する詳細かつ継続的な観察・記録、並びにむちうち症診断の基本となる整形外科的・神経学的一般臨床検査(例えば頸椎等の運動制限、前頸部等の腫脹の有無、諸圧痛点の存否、椎間孔圧迫試験、伸展テストその他、諸種の反射機能検査、病的反射の有無、知覚検査、筋力検査等等)などがほとんど行なわれず、これらの細心かつ正確な診察の結果に、各種補助診断法の結果を総合して、その損傷部位ならびに病態を十分に把握し、これに基き個別的に治療方法を決定し、予後の推定を行うということが、ほとんど実行されていなかつたことの反映であると推認される。(脳波検査、超音波診断などの別途に高額な料金を請求しうることさらな補助診断法が採られていることは認められるが、その結果は記録されておらず、一般臨床所見も不明で、それが以後の治療に生かされたとの証拠は存しない。)

二右乙二ないし四号証、原告巌本人尋問の結果によれば、原告巌、同利枝同幹博の三人は、事故当日から八日目(五月二日)になつて初めて参加人診療所に入院し、ベッドけん引を受け、マンニツトール五〇〇ccの点滴注射を受けていることが認められる。一般に、頸部の捻挫については初期の安静が重要であると論じられているけれども、その安静にとつて最も肝要と思われる急性期を通院治療で済ませながら初診時より八日目になつて改めて入院を命ずるに至つた理由は必ずしも明らかではなく、かえつて弁論の全趣旨(原告の主張)によれば、前叙のとおり同原告らはその前日の昭和四三年五月一日には堺市民病院において入院治療の必要性はないと診断されていることが認められる。仮りに、右入院時、原告らの症状が入院治療を要する程に悪化していたとするならば、まずその原因が詳細な診察により探求されなければならないものと考えられる。しかるに、前記カルテによれば、入院にあたりかような診断が行なわれたことの痕跡さえも認められない。むしろ原告巌はその本人尋問において、参加人診療所のベツドがあくのを待つて入院し、自賠責保険の治療費の残額が少なくなつたと言われて、多少無理をして退院したと述べていることからすれば、同原告らの入院の決定が医学的な必要性とは別個に極めて便宜的になされたことがうかがわれる。

三また前記乙三、四号証によれば、原告巌、同利枝は、入院と同時に三日間にわたりマンニツトール(マニトンS一回あたり五〇〇cc)の点滴注射を受けていると認められるが、証人医師藤尾和久の証言によれば、マンニツトールは頭部の炎症、脳内出血の症状が非常にきつく、脳圧があがつている場合に使用される薬品であると認められるところ、本件カルテにはその使用を必要とするような症状について特に記載もなく(呼吸数、脈膊数等の観察記録が行われた形跡も存しない)また原告巌本人尋問の結果によつてもこれを認めることはできず、他方前記のような入院の経過、本件五名の原告については五才の幼児である幹博を除き、すべて一様に三日間のマンニツトールの点滴を受けていること、(さらにはマンニツトールが一回七七〇〇円もしていること)などからすれば、むしろ医学的意味での必要性については多分に疑問の存するところと言わなければならない。

四大阪大学附属病院に対する前記鑑定嘱託の結果(乙二八号証)によれば、原告らについて、受傷当日並びに昭和四三年五月二〇日又は同月二九日に撮影された頸部レントゲン写真(合計六二枚)からは、原告西別府については先天的な頸椎癒合の外、第三・四頸椎間がやや狭少で、第四頸椎の前面の高さがわずかに減じていること、原告利枝については、当初のレントゲン像で頸椎の生理的前彎が減じて直立位をとつていること、原告去川については、同様に生理的前彎が減じて直立位をとり、第四・五頸椎間にわずかの角状化が認められ、かつ前屈時にのみやや椎体後縁の配列が乱れるが、いずれも正常範囲に止ること、並びに右すべての所見も、レントゲン像上の他の所見と合わせて考えると、いずれも本件追突による頸椎の損傷を推認するうえでの価値に欠け、あるいはこれに乏しいこと、さらに原告巌、同幹博のレントゲン像には何らの異常も存しないことがそれぞれ認定される。しかしながら一方、乙一ないし五号証によれば、参加人診療所においては、原告西別府について後屈時に第三・四頸椎間に、前屈時に第三・四、第四・五、第五・六各頸椎間に、辷りがある、原告巌について前屈時に四・五頸椎間に、後屈時に第二・三、第三・四頸椎間に辷りがあり、第一、二、三頸椎の運動が不良である、原告利枝について前屈時に第二・三、第三・四、第四・五頸椎間に、後屈時に第三・四頸椎間に辷りがある、原告幹博について後屈時に第四・五頸椎間に後方亜脱臼がある(前述)、原告去川について後屈時に第四・五頸椎間に、前屈時に第二・三、第三・四、第五・六頸椎間に、中間位で第五・六頸椎間に辷りがあるとそれぞれ診断したことが認められ、しかも原告巌、同西別府各本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨によれば、参加人診療所では、真実の所見に一致しない右のおびただしい「異常所見」を、わざわざレントゲンフイルム(一八枚)上に鉛筆等で極端に図示し、原告ら各人に「首の骨に食い違いがある」として詳細に解説したことが認められる。ところで最大屈曲時における頸椎々体間の多少のずれは正常者の中にも比較的多く見られる所見であつて、これのみでは直ちに異常所見とは見なし難いものであり、さらにいわゆるむちうち症の症状には精神的な因子が混入し易く、ほとんどの医学書に治療にあたる医師がこの点に十分な配慮を払い、患者の不安を除くべきことが常識として指摘されていることからすれば、右事実はいささか不可解と言うべきである。これらの点に、本件とは別の事件で同種患者についての参加人診療所における治療内容を検討した鑑定書の写しである乙九号証、前記原告ら本人尋問の結果、参加人診療所の後のような経営の実態(本項六)を総合すると、参加人診療所では原告らに対し、レントゲン所見についての前記のようなおおげさな説明をことさらに行い、かつ入院当初のものものしい点滴注射などとあいまつて、前記五〇日近くにのぼる入院治療の必要性を納得させるとともに、その病状について原告らを極めて大きな不安におとし入れ、むしろ以後の症状を悪化固定させる契機を作つたのではないかとさえ疑われるのである。

五各原告らについての前記カルテによれば、同人らは入院期間中ベツドけん引を受けていた旨の記載があり、証人手島祥一の証言によれば右は入院中終日継続してベツドで安静固定を保ちけん引を行うことのように受取れるが、その真偽の程は前掲原告ら本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨に照らし疑わしく、また「ベツドけん引看視料一日あたり五〇〇円」の意味内容もあいまいである。さらに「ベツドけん引」と機械けん引の併用の必要性についても、これを首肯させるに足る資料は存せず、多分に疑問の残るところである。

六右に例示したような本件診療の相当性についての個別的な疑問の外、<証拠>並びに弁論の全趣旨を総合すると、参加人診療所の実態について、次のような事実がうかがわれる。

1  参加人診療所は、医療法上のいわゆる診療所であり、同法によりベツド数を一九床以下に限られ、また患者の収容時間も四八時間以下を原則とされているのに、大阪府知事への届出をいつわり、八〇床近くものベツドを設置し、本件のごとく長期間患者を入院させていたことが認められる。医療法並びに同法施行令、施行規則によれば、二〇床以上の収容施設を有し、患者を長期間収容することのできる「病院」を開設するには、知事の許可を必要とするのみならず、その施設の構造、設備、病室の広さ、患者数に応じた常勤医師数、看護婦数の定め、専門薬剤師の常置、給食施設、入院患者数等の一ケ月ごとの届出(病院報告)など細かな規制と監督が行なわれているが、参加人診療所はこれらを潜脱し、違法な診療所経営を続けていたことが認められる。

2  本件診療当初参加人診療所の常勤医師は手島祥一ただ一人であり、後に昭和四三年六月一日から医師藤尾和久が加わつた(ただし同年一〇月には福島区内に別の病院を併設したため、両医師ともそちらとかけもちすることになつた)ほか、外部の非常勤医師が加わるだけであり、又看護婦もパートタイムの者を入れて九名であつたことが認められる。一方参加人診療所のベッド数は前記のごとく当時八〇床近くあり、常時ほぼ満員の状態にあり、外来の患者も約一〇〇名位はあつたことが認められる(右に反する証人手島の証言は採用しない)。

ところで、前記医療法施行規則(第一九条)においては、適正な医療が行なわれるためには、ほぼ入院患者一六名に一名の常勤医師、及び入院患者四名に一名の看護婦を要するとされていることが明らかである。さらに実際にも、大阪赤十字病院ほか大阪市内を中心とする一七の病院ならびに診療所に対する調査嘱託の結果(乙一〇ないし二三号証、乙二五、二六号証)によれば、これらの病院等において医師ならびに看護婦の数とその収容ベツド数を比較すると別表第五表のとおりであることが認められる。結局いずれの観点からしても参加人診療所においては医師・看護婦の数に比べ極端に入院患者の数が多かつたことが認められる。その結果、前述のごとくその患者に対する診察・カルテ(熱計用箋を代用)への記録等は極めて不十分になり、例えば入院患者の病状管理の基本となる熱計表の記入さえ行なわれていなかつたことが認められる。参加人は、むちうち症患者には一般に発熱がないのでこの記入は不要である旨を主張するけれども、一方では甲二号証の三のように原告巌に対して脳内出血を疑うとしてみたり、高度の頭部外傷等に使用されるマンニツトールやデキサシエロゾン、ルシドリール等を多用したりもしておりかつ原告去川や西別府は入院後一週間は高熱にうなされた旨、原告巌も発熱があり、氷を使用した旨主張しており、その真偽の程は疑わしいにしても、いずれにせよ参加人診療所の病状管理のずさんさを否定することはできない。

3  参加人診療所においては、入院患者の実に三分の二はむちうち症患者であつたことが認められる。ところで、いわゆるむちうち症患者については、一般に心因症的傾向が顕著であり、治療法が明確ではないうえに、交通外傷によるものとしてそのほとんどが自費患者であつて、社会保険支払機関による医療内容の審査を受けぬため、高価薬の大量投与等による濃厚治療が可能であること、しかも五〇万円迄の治療費は委任を受けることにより、簡単な請求書によつて自賠責強制保険金から確実に支払われることなど病院経営上利点の大きかつたことが認められる。そして逆に、そのことに関係して、ごく一部の悪質な医師においてではあれ、過去のマスコミ等の誇大な喧伝によるむちうち症に対する一般人の恐怖感に便乗して、意識的・無意識的に患者を作りあげ、あるいは長期の入院等を行い不要な高価薬の大量投与等を続ける傾向のあることが指摘されていることは、例えば「ひと鳴き五〇万円」という巷間のうわさが専門書(諸富武文教授編・外傷性頸部症候群)などにもとりあげられ、かつ、むちうち症の医源性疾患としての性格が昭和四三年一月二七日付朝日新聞で大阪大学佐野教授により論じられているごとく、すでに公知の事実と言うべきである。

4  しかして後に詳述するごとく、参加人診療所における自費患者の場合と比較しても著るしく高額であり、結局、参加人診療所においては前記のごとく医療法の規定を潜脱し、かつ交通外傷による自費患者(就中手数のかからぬむちうち症患者)を主体に利益本位とも見られる経営を続けてきていたことがうかがわれる。

七以上一ないし六の諸事実ならびに本件証拠上認められる諸般の事情を総合すると、参加人診療所においては原告らに対し十分な診察さえも行なわないままに入院を命じ、ことさらに高価薬等を大量投与し、治療の対象となつた本件事故による傷害の程度に比べ、医療上通常必要とされる程度を越えて、全体的にみて過剰・濃厚な治療を行なつた疑いが強く、さらにはその治療そのものが不適当であつたため、ことさらその愁訴、症状を増悪、長期化せしめた疑いも存するのであり、その治療が本件事故による本来の治療に向けられ、そのために必要とされたものであつたか否かに関して、多分に疑問が残るといわなければならない。

第六参加人診療所の診療費水準について

次に、参加人診療所における診療費について、(その診療行為の必要性並びに相当性に関する前項のごとき問題点はさて措き)、その診療費単価の側面から、これと社会一般の治療費水準、すなわち同様の傷害を治療するために通常要求されかつ社会的に一般に予測される診療費水準、との比較検討を進める。

一大阪府社会保険診療報酬支払基金に対する調査嘱託の結果(乙二七号証)によれば、現在大多数の中小病院等で採用されている健康保険診療報酬点数表(乙)(厚生省告示第一七七号。本件診療当時のもの、以下同じ)の適用下に、原告らに対して施されたと同じ医療行為を行つた場合、その治療費は別表六の第一・第三欄のとおりとなることが認められる。右認定に反する丙三ないし七号証の算定は、参加人の従業員が一方的にこれを行い、その前提とする診療内容等について当裁判所の前記認定と相違するなどの点から、これを採用しない。また証人手島の証言によれば、注射の場合に二薬混合注射が行なわれていると認められるため診療報酬は実際にはより低廉になる筈であるが、この点も捨象した。

一方、<証拠>によれば、参加人診療所において原告らの治療費は同表第二欄、第四欄のとおりであることが認められる。(<略>)

これによれば、原告ら各人の治療費は、健康保険による場合にくらべ、注射投薬の処置その他の直接的な治療費については、4.4倍ないし5.0倍、平均して4.63倍にのぼつていることが認められ、これに入院費、給食費を含めても3.7倍ないし4.3倍、平均して3.9倍にのぼつていることが認められる。

二大阪赤十字病院ほか一六の病院並びに診療所に対する調査嘱託の結果、(<証拠略>)によれば、大阪市内を中心に任意に抽出されたこれらの病院において、いわゆる自費扱い患者の診療費は別表第七表のとおりであることが認められる。これによれば、これらの病院においては健保基準によらない自費扱い患者の場合であつても、その直接的診療費は健保基準の二倍止りであり、特別な例を除いて大半の病院では、むしろ健保基準の1.5倍程度をその基準としていることがうかがわれる。この結果は、自賠責共済を取扱う全国共済農業協同組合連合会に対する調査嘱託の結果(<証拠略>)により認められる、交通傷害についての保険診療費と自費診療費の全国的な実態調査の結果とも、ほぼ一致している。すなわち、右証拠によれば、自賠責共済であつかつた四七六例において、被害者一人あたりの治療費は平均すると自費診療の場合が保険診療の場合の1.3倍になつており、また自賠責保険であつかつた一万〇六七四件においては、同じく約1.1倍になつていることが認められ、一方実診療日数一日あたりの診療費についてこれを比較すると、自賠責共済であつかつた一万九三四一件では、平均して同じく約1.5倍であり、これを私立病院のみについて比較しても、同じく約1.6倍に留まることが認められる。

このような実態に照らすと、参加人診療所における前項認定のような診療費は、やはり社会一般で常識的に考えられている診療費の水準を著るしく上回つているものと言わなければならない。

三参加人は、健保診療報酬基準の不当性を云々し、日本医師会の発表した自賠法関係診療料金指標による換算治療費との比較を主張する。右料金指標がいかなる根拠に基き設定させられたものか、また参加人の主張する換算結果が右指標に照らして正確なものであるか否か必ずしも明らかではないが、丙八号証によれば、右指標は日本医師会が昭和四四年一〇月一方的に発表したものにすぎないことが認められ、いまだ社会一般の承認を経たものとは認め難く、かつ、右発表の行なわれたのも、本件診療の行なわれた時より約一年半を経ての後であつてみれば、これが本件診療費についての前項の結論を特に左右するものとも認められない。

四次に参加人は、救急病院における診療費一般の特殊性を強調する。しかして、その主張がそれ自体、就中参加人の引用する大阪赤十字病院安藤協三博士の見解などのうちには、傾聴すべきものも含まれている。しかしながら、参加人診療所における診療経営の実態、例えばその人員構成、入院患者の種別等は前第五項の六に認定のとおりであり、その診療費水準の合理性について、救急指定病院としての特殊性を考慮しなければならないものとは認められない。深夜頭蓋血腫患者に開頭手術を施すという大阪赤十字病院の例などを基に、参加人診療所における診療費の適正基準を考えるなどということは、およそ、その実態とかけ離れた議論にすぎない。(そもそも、かように高度の技術を中心とする救急例を、あえて薬価を中心とする体系を採用している健保基準(乙)表に換算して引用すること自体矛盾とも言えよう。)。現実に多数の病院の診療費水準が前記二項前段認定のとおりであり、かつ全国平均もこれに見合つている以上、これらに基く前記二項の結論を、右のような参加人の主張のゆえに左右すべきものとはとうてい認められない。(なお、本項において、救急診療費のあるべき基準一般を論じているのではない。本件診療費債務の成立、この債務負担と事故との相当因果関係を認定するために必要な限りで、診療費の現実の水準を探求したにすぎないものである。)

第七被告らの損害賠償義務の範囲について。

一まず、第一争点(原告らの診療債務の負担)について判断する。一般に、診療契約は医師において、患者の疾患に対し概括的に、且つ或る程度の自由裁量のもとにその時点において医学上合理的であるとされている方法による診断、治療をなし、患者の側において、これに対する費用と報酬(診療費)を支払うことをその内容としているものと解される。しかして、その診療費が通常の事例に比し極端に高額であるとして、患者においてその妥当性を争う場合には、当該治療行為の内容、つまり病状とこれに向けられた治療行為のその時点における医学的合理性ないし必要性、当該治療行為の難易の度合、医師の手腕の程度、一般的治療費水準との比較等諸般の事情を具体的に検討したうえ、右契約当事者の合理的意思に合致する適正な金額を超える部分についての医師の右請求権が否定されることもあり得よう。しかしながら、本件においては、先にみた如く本件診療行為には、幾多の疑惑がもたれるけれども、患者たる原告らと、医師側たる参加人診療所との間には、参加人請求の診療費について争いの存しないところであるから、(もとより、この間の診療契約の成立については、当事者に争いがない)これを措いて、積極的に右診療費債務存否の判断に及ぶのは相当でなく、後記の如く、本件被告に対する関係で、事故との相当性の観点から原告らの診療費債務のうち損害として請求しうべき範囲を検討すべきものと考える。被告主張の診療費債務不発生の点は、当裁判所の採用しないところである。

二次に、第二の争点(右診療費債務の負担と本件事故との相当因果関係性の有無)について判断する。

原告幹博については前記第三の二の項において詳述したごとく、本件訴訟において提出された証拠からは、同原告が本件追突事故により頸椎捻挫等の傷害を受け治療を必要としたとの事実を認めることができない。従つて、その治療費が本件事故について相当因果関係を有するとは言い難い。ただし、同項において認定したごとく、当初の診断のために要した初診料、超音波診断料、レントゲン検査料(初回のみ)、並びに頭部打撲の診療のために要したしつぷ代及び初診時の投薬注射費の一部等の負担は、本件事故に相当因果関係を有するものと認められる。ところで、<証拠>によれば右診療費の合計は金二万円を上まわることは無かつたと認められるところ、前掲別表第七表に照らすと、これらの主に技術的内容の費目に限つてみれば、参加人診療所の診療費が一般の水準に比べ異常に高額であつたとも認められない。従つて、結局被告らは同治療に対し右診療費二万円を受傷によりこうむつた損害として支払う責に任じなければならない。

原告西別府、同巌、同利枝、同去川の診療費については、前記第五の項において詳述したごとく、それらの診療(入院の措置をも含めて)の相当部分が、本件事故による右原告らの傷害の診療に向けられ、そのために必要かつ相当とされるものであつたか否か極めて疑わしいうえに、他方では第六の項において詳述したごとく、その診療費単価自体も社会一般で常識的に認められている診療費の水準を著るしく上回つていることが認められる。結局これらが相まつて、被害者たる原告ら(幹博を除く)において、本件事故により、一応右金額の支出を余儀なくされたものであるとしても、加害者たる被告との関係において、損害の公平な負担の観念から、つまりその支出の必要性、合理性、相当性の見地から右金額を本件事故と相当因果関係を有する支出として認めることは、到底できない。しかるところ、前述(第二の一項後段)のとおり本件証拠上右因果関係の相当性を個々別々に論ずることはできないけれども、参加人診療所の人的施設の貧弱さと、前記医療の量産から来ると思われる診療録の記載の粗雑さ、過剰診療の疑い、疎診粗療等の特異な実体からうかがえる原告らの受傷の程度、診療の内容・回数、そしてその診療費が社会的な水準に比較して、極端に高額である点など、その他本件証拠上認められる諸般の事情を総合すると、原告らの診療費債務の総額のうち、次の認定額を超える部分については、本件事故と相当因果関係があるものと認めるに由ないものといわざるを得ない(平均して「健保換算診療費の約1.5倍」を超える部分)。しかして、原告ら各人の健保換算診療費は前述のごとく別紙第六表第三欄のとおりであり、右相当額(一〇〇円未満切捨て)は、原告西別府について一六万円、原告巌について一五万一五〇〇円、原告利枝について一一万五二〇〇円、原告去川について一三万七九〇〇円となる。また本件証拠上個人別には入院診療並びはその継続の必要性についても疑問がないわけではないが入院中のテレビ、ふとん、コンロの賃借料及び光熱費(乙三号証により原告巌について四五〇〇円、乙四号証により原告利枝について一万一一〇〇円、乙五号証により原告去川について七六〇〇円)債務の負担も一応本件事故に相当因果関係を有するものと言うべきである。

従つて、結局、被告らは各自原告西別府に対し一六万円、原告巌に対し前記合計一五万六〇〇〇円、原告利枝に対し同じく一二万六三〇〇円、原告去川に対し同じく一四万五五〇〇円の支払の責に任じなければならない。

第八結論

右に述べたごとく、原告らの請求のうち原告西別府において一六万円、原告巌において一五万六〇〇〇円、原告利枝において一二万六三〇〇円、原告幹博において二万円、原告去川において一四万五五〇〇円並びにこれらに対する右損害発生の日の後である昭和四三年八月二九日(本件訴状送達の日の翌日)から支払ずみに至るまで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める部分は正当であるからこれを認容し、その余の請求は理由がないのでこれを棄却することとし、訴訟費用の負担について民訴法八九条、九五条、九三条、九三条、九四条を、仮執行の宣言について同法一九六条を適用して主文のとおり判決する。

(本井巽 中村行雄 小田耕治)

別表 第一

(手島外科における投薬,注射費の健保基準との比較表――被告ら主張――)

薬品名

投薬注射費

投薬,注射

回数③

注1

①×③

②×3

②/①

甲表

(薬価)

乙表

手島

外科

アデホスコーワ.2号

皮注 10mg

71

138

500

95

13,110

47,500

3.6

ノブロン B

〃 2ml

95

162

500

4

648

2,000

3.1

ACTH

〃 40単位

960

1,027

3,000

1

1,027

3,000

2.1

キモプシン

〃 1瓶

280

347

1,100

21

7,287

23,1OO

3.2

アミノバール

〃 2ml

19

88

350

13

1,144

4,550

4.0

ヌトラーゼ

〃 5~10cc

191

258

1,000

13

3,354

13,000

3.1

メジコン.0.5%

〃 5~10mg

19

89

500

3

267

1,500

5.6

レプチラーゼ S

〃 1ml

176

243

850

9

2,187

7,650

3.5

セキドリン

1cc

22

15

500

2

30

1,000

33.0

ズフアジラン

皮注 1ml

41

105

450

17

1,785

7,650

4.3

デキサシエロヅン

5mg

804

871

2,200

5

4,355

11,000

2.5

プリモボラン

100mg

1,485

1,552

4,000

2

3,104

8,000

2.6

プレドニン

10mg

245

312

1,000

4

1,248

4,000

3.1

12.5mg

295

364

2,000

2

728

4,000

4.4

ルシドリール

静注 250mg

760

866

6,500

7

6,062

45,500

7.5

50%ブドー糖

20mg

20

113

450~500

31

3,503

14,100

4~4.4

レスプラS.20%

10m1

102

208

650

2

416

1,300

3.1

アドナ

5~10cc

81

187

700

30

5,610

21,000

3.7

ナル

5~10cc

20

126

550

128

16,128

70,400

4.4

ザルツグレラン

20m1

43

144

500

15

2,160

7,500

3.5

マンニツトール

点滴300~500cc

1.089

1,271

7,700

12

15,252

92,400

6.1

シグママイシン

1000mg

240

238

400

1.2

2,856

4,800

1.7

シグマグン錠

1錠

22

29

200

8

232

1,600

6.9

キョーリン AP2

1g

53

62

200

18

1,320

3,600

3.3

アリナミン 25

4錠

53

60

300

5

300

1,500

5.0

EAシオノギ.コントミン錠

4~6錠

4錠

77

75

750

223

16,725

167,250

10.0

EA.コント.シグマ

103

101

950

6

606

5,700

9.4

EA.コント.キモタブ

4~6錠

370

366

1,300

6

2,208

7,800

3.5

EA.キモタブ

322

320

1,100

6

1,920

6,600

3.5

クリアミン

4錠

112

110

500

10

1,100

5,000

4.5

MP アス

1g

22

15

100

10

150

1,000

6.7

116,822

595,000

5.12

注1.原告ら5名の合計

別表 第二

(手島外科におけるその他の診療費の健保基準との比較表――被告ら主張――)

診療内容

診療費

回数③

①×③

②×③

②/①

甲表

乙表①

手島外科②

初診料

450

310

1,000

4

1,240

4,000

3.2

〃(幼児)

560

424

1,000

1

424

1,000

2.4

再診料

100

30

100

6

180

600

3.3

診断書料

0

0

500

5

0

2,500

X線検査   {

875(1枚目)495(2~5)115(6~)

1,300

70

30,850

91,000

3.0

924 (〃) 544 (〃) 164 (〃)

1,400

1

924

1,400

1.5

967 (〃) 589 (〃) 209 (〃)

1,700

2

1,556

3,400

2.2

脳波検査

970~2400

1452~2561

9,800

5

7,260

49,000

3.8~6.7

検尿,(たん白)

70

18

200

1

18

200

11.1

超音波検査

1,194

5,000

2

2,388

10,000

4.0

頸椎等処置 {

初2,000

7

1,057

14,000

13.2

120

151

続1,800

5

755

9,000

11.9

湿布

0

91

600

319

29,029

191,400

6.6

機械ケン引

120

151

400

186

28,086

74,400

2.6

ケン引監視料

0

0

500

210

0

105,000

短波

30

300

68

20,040

20,400

10

合計

105,809

577,300

5.46

第一表,

第二表の合計

226,631

1,172,300

5.27

別表 第三

(手島外科における治療費の,他の治療費基準との比較表――参加人主張――)

第一欄

第二欄

第三欄

患者名

健保乙表

労災基準

日医基準

手島外科

西別府サチ

159,648

186,835

374,951

423,700

児島巌

152,284

168,522

326,368

397,050

児島利枝

143,870

160,743

287,123

328,050

児島幹博

93,495

108,575

229,898

233,150

去川紀子

130,497

146,391

306,891

336,750

合計

679,794

771,066

1,525,231

1,718,700

別表 第四の一

(西別府サチに対する診療内容)

初診(深夜)

1回

診断書

1通

X線写真(頸部6つ切7枚)

2回

(足部6つ切1枚2方向)

1〃

脳波検査(8チヤンネル光刺激)

1〃

カラー(紙)(むちうち症について)

1〃

採型(〃)

1〃

ケン引(約10度のベツドケン引)

1〃

〃看視

49〃

機械ケン引1日2回

24日

頸部処置(湿布)

1回

頸部湿布

51〃

左足〃

51〃

左肩〃

18〃

超短波療法

24〃

神経ブロック   (キシロカインプレトニン5mg)×4

5日

アデホスコーワ2号            皮注 10mg

16回

ノブロンB                  〃   2ml

2〃

キモプシン                 〃   1瓶

9〃

アミノバール                〃   2ml

1〃

レプチラーゼS               〃   1ml

1〃

セキドリン                 〃    1ml

2〃

ズファジラン                〃   1ml

4〃

デキサシェロゾン             〃   20mg

1〃

5mg

1〃

プリモボラン                〃  100mg

1〃

50%TZ                  静注20ml1管

3〃

アドナ                    〃   10ml

4〃

ナル                     〃   10ml

45〃

ネオラシンスリピー            〃   1管

8〃

マンニツトール             点滴  500cc

3〃

シグママイシンカプセル         250mg4錠宛

6日分

EAシオノギ.コントミン          25mg各4錠

46〃

AP2(キョーリン)                   1g

1〃

屯服

10回

処方(内服)

17〃

〃(屯服)

10〃

入院(給食)

50日

別表 第五

(医師等の数と収容ベット数の比較表)

病院名

医師数

看護婦数

ベッド数

大阪赤十字病院

116

438

1,111

国立大阪病院

86

498

700

大阪厚生年金病院<中略>

63

235

560

明和病院

21

109

419

東大阪病院<中略>

21

41

133

手島外科内科

1(2)

9

80

別表 第六

(健保乙表による治療費と,手島外科の治療費の比較)

原告名

診療費(注1)

第一欄

第二欄

健保乙表に換算した治療費

手島外科の治療費(倍率)

西別府サチ

72,696

333,100

4.58

児島巌

70,403

309,950

4.41

児島利枝

46,208

231,850

5.01

児島幹博

36,345

176,150

4.77

去川紀子

56,605

256,750

4.54

五名合計

282,257

1,307,800

4.63

原告名

総診療費(注2)

第三欄

第四欄

健保乙表に換算した治療費

手島外科の治療費(倍率)

西別府サチ

106,696

423,700

3.99

児島巌

101,003

392,550

3.89

児島利枝

76,808

316,950

4.13

児島幹博

58,245

233,150

4.00

去川紀子

91,965

329,150

3.58

五名合計

434,717

1,695,500

3.90

注1.投薬,注射代,処置,検査料の合計。

注2.上記に入院費・食費を加えたもの。ただしテレビ,フトン,コンロの賃借料,光熱費を除く。

別表 第七

(他の病院の自覚患者に対する治療費水準と手島外科の治療費との比較表)

病院名

大阪赤十字

病院

国立大阪

病院

大阪厚生

年金病院

<中略>

明和病院

東大阪病院

<中略>

手島外科

内科

健保基準

甲 表

自費診療費の

健保治療費に対する

比率

約1.5

1

約1.2

1.5

(一部例外)

2

(一部例外)

約4.6

リシドリール

250mg1びん(静)

1,140

760

912

1,299

2,662

6,500

マンニットール

20%500m(点)

2,355

1,570

1,884

2,718

3,776

7,700

ナル

10cc(静)

90

26

179

256

550

ブドー糖

50%20ml1管(静)

90

18

48

192

256

450?500

EAシオノギコントミン

12.5mg各4錠

90

43

78

90

(処方料別)

120

750

初診料(深夜)

1,125

750

1,200

1,200

700

1,000

ベッドケン引

初回 円

1,290

1ケ月

1,320

初回

2,040

初回

2,000

初回

1,800

ベッドケン引カンシ料

(1日)

0

0

0

45

60

500

機械ケン引

(1回)

180

初回のみの

860

144

227

302

400

湿布(頭頸部)

0

0

0

159

212

600

短波

90

0

0

45

60

300

X線6ッ切7枚

4,627

3,085

3,702

5,768

5,500

9,100

脳波検査8チャンネル

光刺激付

6,300

4,200

2,520

842

6,200

9,800

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